夏の間ずーっと待っていた雨模様の空がやってきた国東は、朝晩少しずつ過ごしやすくなってきました。今年の夏も、あとわずかだと良いですね。
今年は、国東で過ごす4度目の夏でしたが、移住して初めて「盆踊り」を経験しました。
長いことやっていなかったのを復活させたいという地区の練習会に誘われて、何かよくわからないけど楽しそう?と初回の練習会に参加したのが7月の初旬。
太鼓も口説き(くどき)※もいない状態でのスタートで、本当に一からのスタートといった感じでした。
※盆踊りの唄を「口説き」と言い、唄う人を「口説き手」と言います。
まずは踊りの音楽を知らないと何もできないので、他地区から教えに来てくれた太鼓の叩き手さんが、太鼓のリズムを丁寧に教えてくれました。

太鼓の楽譜?
日本の伝統文化は何でもそうですが、盆踊りも例にもれず、口伝で継承してきたもの。口説き集という歌詞カードのようなものはありますが、楽譜はありません。
地区ごとに、太鼓の叩き方を記したもの(上記写真参照)はあるようですが、口説きのメロディは、完全に聴いて覚えるしかありません。

地域の方が踊ってくれて、太鼓のリズムの合わせ方を習います
リズム自体はそんなに難しいものではなく、2つ上の写真にある2行をずっと繰り返すので、覚えてしまえば簡単です。
ただ、太鼓を叩く人によってアレンジが違うので、基本がわかっていないと聞いて覚えるのは難しいでしょう。
また、西洋音楽を勉強していて楽譜からの情報に頼ってきていると、拍や拍子がわからないので、感覚が掴みづらいかもしれません。

口説きには色々種類があり、地域によっても様々です。
国東町は、メインが「六調子」、小唄に「左衛門」を口説きます。
さらに、唄い出しの「まくら」、メインの「本文」、口説き手が代わるときの「つなぎ」、六調子から左衛門(またはその逆)に代わる「切り替え」など、口説き文句の種類があまりにも多く、正直覚えられません…(;^ω^)
国東町は、合併前の旧町時代に国東町全域で盆踊り保存会を立ち上げて踊りを統一したということなので、「六調子」はどの地区でも同じ口説きと踊りになっているそうです。
※一部地域では、現在も統一前の踊りを継承しているそうです。
その保存会が残していた盆踊りの録音テープがあり、それを聴きながら練習してみましたが、
これは…できそうにない!!Σ( ̄ロ ̄lll)
テープの音質が悪いので聞き取りにくいのもありましたが、何より口説き手が代わると何か違う…同じじゃないじゃん!
そして、文句が変わると拍が変わる。言葉が字余り(または字足らず)になると、拍数が変動してしまうという現象が起きているようです。
これはもう、楽譜を作るしかない( ;∀;)
曲を音源から楽譜に書き起こすことを採譜(さいふ)と言います。
いわゆる「耳コピ」と言われるものですが、耳でコピー(聴き取り)するだけではなく、コピーしたものを楽譜にして「誰でも演奏できるようにする」までが採譜です。
採譜師というお仕事もあるくらい専門的で、すっっごく!時間と根気のいる作業です。

六調子の採譜
以下は、私の採譜の手順です。
①リズムを聴き取る。
②聴き取ったリズムに区切りを入れて拍子を確定する。(2拍子とか3拍子とか)
③歌詞を聴き取る。
④音(ドレミ)を聴き取る。
⑤調(音階)を確定する。(ハ長調とかニ短調とか)
⑥五線譜に清書する。
「六調子」は単純な3拍子だったので、まだ何とかなりました。2拍子(8分の6拍子)かも?とも考えましたが、太鼓のリズムを考えると3拍子で良さそうかな。
しかし、「左衛門」はとても難しい!

左衛門の採譜①(2拍子と3拍子)
最初3拍子かと思ったのですが何かしっくりこず、2拍子だと音が余る…どうも変拍子のようです。何度も何度も聴き直して、唄のアクセントがどこにあるかを探るのですが、どうにも聴き取れない( ;∀;)

左衛門の採譜②(どこで拍子が変わるか何度も聴き取る)
採譜に行き詰る中、採譜するだけで口説きができるようにはならないし、口説くには踊りがわからないとね…と、他地区の盆踊り練習会にも参加させていただきました。

上国崎地区のミニデイにて盆踊り練習会

興導寺区・今在家区合同の練習会
どの地区にも、踊りの上手な方はいらっしゃるので、「あ、この人上手い!」と思う人の踊りをじっくりと見させてもらい、真似をします。何事も、模倣が肝心です。
そうこうするうちに、気づけばもうお盆。
口説かないといけない盆踊り大会は日程が一番最後なので、とりあえず、参加できる地区の盆踊りに行ってみることに。

大恩寺区の供養盆踊り
こちらもコロナ以降初の盆踊り開催となった大恩寺区。
山間部にある1行政区で50名近い参加者となり、公民館は大いに賑わいを見せていました。
とっても上手に踊る方を発見し、おかげで踊りをほぼほぼマスターできました。

お位牌を持ち込み、供養する
そもそも盆踊りは、その年に初盆を迎える方を供養するための踊りです。公民館には、過去5年ほどの間にお亡くなりになった方のお位牌が持ち込まれていました。
昔は初盆の家をまわって、家の前で踊っていたそうです。

「きとわ」での夏祭り
こちらは国東町中心部の夏祭りの中で行われる盆踊りです。
供養盆踊りではありませんが、区ごとに揃いの浴衣や法被を着て、やぐらに提灯と、雰囲気たっぷり。
休憩を挟んで約1時間、途中からは娘のお友だちに踊りを教えながら、充実の盆踊りでした。

夏祭りの盆踊り
さて、残るは口説きデビューのこちら。

地域の老人ホームとの合同開催となり、当初より規模も大きくなってしまいました。
ホームの入所者さんは色んな地区から来られているので、この地区の踊りを知っている方は少ないようでしたが、「口説きと太鼓を聴くだけで思い出す」と大変喜ばれていました。

松寿園盆踊り大会
施設所有の大きなやぐらに上がり、同じ谷から助っ人に来てくださった重鎮と一緒に口説きます。
六調子は、前半は「阿波の鳴門の巡礼お七」、後半は「泉福寺由来詩」を口説きました。
左衛門は、教えてくださった方が他地区の方で、この地区の左衛門とは違う唄い方だったので、重鎮の方にこの地区の左衛門を口説いていただきました。
※左衛門は、どうやら谷ごとに違うようです。

六調子(国東町)の清書
さて、件の楽譜化ですが、六調子は完成しました。
音の高さは、子どもでも無理なく唄える音域に移調しているので、通常より高くなっています。ハ調にすると、典型的な日本の四七抜き音階※で作られているのがよくわかります。
※音階(ドレミファソラシ)のうち、四番目と七番目の音を使わない音階。ハ調の場合は、ファとシを使わない。
男性が口説く時は、最初の音がド、女性が口説く時は、最初の音がファ#から始まるのが通例のようです。
もちろん、「これは違う!」と思われる口説き手さんはいらっしゃるかと思いますが、若い人たちが継承していくには楽譜があった方が敷居も下がり、これを基本にして崩していく(アレンジする)と、文句で拍数が変わったりすることもなくなり、太鼓の叩き手も踊り手も、もっとやりやすくなるんじゃないかなぁ…と思います。

左衛門(豊崎地区)の清書(未完)
左衛門は、採譜の途中で「地区ごとに違う」ということが判明し、時間もなかったので途中で放棄してしまいました(;^ω^)教えてもらった左衛門は短調でしたが、どうも他の地区は長調で唄うようです。
来年に向けて、じっくり時間をかけて仕上げるかな…と、休憩中。
自分が子供の頃は、盆踊りなんてやってたかな?と思うくらい記憶にないのですが、福岡なのでたぶん炭坑節で踊っていたんじゃないかなぁ。
自分の娘には、楽しい夏の思い出として、しっかり記憶に残してほしいなと思います。できれば、大人になったら口説きか太鼓の担い手に…( ´艸`)

とっても上手!と大人たちから褒められた娘
皆さんの地域の盆踊りは、いかがですか?
地域支援サポーター国東圏域担当:内田 華子